イラストを使えば伝わる?
デザインで効果的な場面とは

企業さまの目には見えないサービスが、実際どのように人々の生活の中で活かされているかを表現したイラストです
「このデザインには、イラストを使ったほうがいいですか?」
デザインのご相談をいただく中で、そんな質問をいただくことがあります。イラストには、写真にはない表現の自由さがあります。一方で、どんな場面でもイラストを使えばいいわけではありません。
大切なのは「イラストを使うこと」ではなく、「何を、誰に、どのように伝えたいのか」だと思います。
では、具体的にどんな場面でイラストが有効なのか.....?今回は、キービジュアルやWebサイト、パンフレットなどのデザインを考えるときに、イラストが力を発揮する場面について整理してみます。
イラストは「飾り」ではなく、伝えるための手段
まず、イラストを考えるときに大切にしたいことがあります。それは、イラストを単なる装飾として考えないこと。
「なんとなくかわいいから」
「写真がないから」
という理由だけでイラストを使うのではなく、「この情報を伝えるためには、イラストという表現が適している」という視点で選ぶ。これはイラストに限った話ではありません。写真、イラスト、文字、図、動画など、デザインにはさまざまな表現方法があります。その中から、目的に合ったものを選んでいく。イラストも、そのための一つの選択肢という考え方です。
1.まだ存在しないものを見せたいとき
イラストが特に力を発揮するのが、まだ実際には存在していないものを表現するときです。例えば、
・新しく始めるサービスや完成前の施設
・未来の利用シーン
・新しい仕組みやサービスを利用している人の姿
こうしたものは、まだサービスが始まっていないので実際の利用風景を撮影できないために写真で表現しようとしても難しい場合があります。そんなとき、イラストなら「こういう世界を実現したい」という未来のイメージをつくることができます。つまり、
存在しないものを、見る人の頭の中にイメージしてもらう。
これはイラストならではの大きな役割の一つだと思います。
2.抽象的なことを伝えたいとき
「安心」
「つながり」
「成長」
「地域とのつながり」
「伴走する」
「未来をつくる」
こうした言葉は、事業の中でもよく使われます。でも、言葉だけでは、人によって思い浮かべるイメージが違います。
そこでイラストを使うことで、抽象的な概念に具体的なイメージを与えることができます。
例えば「つながり」という言葉を、複数の人や地域、サービスなどがつながっている一つのイラストとして表現する。言葉だけでは伝わりにくかったものが、視覚的なイメージとして理解しやすくなることがあります。ただ、注意点として、「その事業にとっての安心とは何か」「どんなつながりを表現したいのか」等、そこまで考えてイラストの内容を設計することが大切です。
3.難しい情報を、やわらかく伝えたいとき
金融、IT、士業、医療、BtoBサービスなど、事業によっては説明する内容が複雑になることがあります。専門用語が多かったり、仕組みそのものが見えにくかったりすると、最初の段階で「難しそう」と感じられてしまうことも。そんなとき、イラストが情報への入口になれる。文章だけで説明するのではなく、「まずイラストを見ることで、なんとなく内容が分かる」という状態をつくる。
またこれは、サービスそのものを説明するイラストだけではありません。人物や場面を描くことで、見る人が自分自身を重ね合わせやすくなる場合もあります。
ただし、イラストを使えば必ずやわらかくなるわけではなく、色、線、余白、人物の描き方、構図などによって、印象は大きく変わります。だからこそ、事業の雰囲気に合わせて表現を設計する必要があります。
4.キービジュアルで世界観をつくりたいとき
キービジュアルは、そのWebサイトやブランド、サービスを見たときに、最初に受ける印象をつくる重要な要素です。ここでイラストを使う大きなメリットの一つが、世界観を自由に設計できること。写真は、現実にあるものを切り取ることが得意です。実際の商品、店舗、働いている人、風景。
一方でイラストは、現実に存在するものをそのまま再現する必要がありません。複数の要素を一つの画面に組み合わせたり、現実には存在しない場面を描いたり、事業の考え方を一つの世界として表現したりすることができます。だからこそ、「このサービスを使った先に、どんな世界があるのか」を伝えたいときに、イラストが有効になることがあります。
5.写真では表現しにくい構図をつくりたいとき
「たくさんの人がサービスを利用している様子」
「複数の機能が連動している様子」
「人と人のつながり」
「頭の中にあるアイデアが広がっていく様子」
こうした場面は、写真で撮影しようとすると、モデルや場所、撮影環境などが必要になります。もちろん、それが適している場合も多くありますが、イラストなら、必要な要素を一枚の中に自由に組み立てることができます。
つまり、イラストは現実を撮影するためのものではなく、伝えたい情報を視覚的に構成するための手段にもなります。
これは、説明図やサービス紹介のイラストなどでも大きなメリットになります。
写真とイラスト、どちらがいい?
ここまで読むと、「では、写真よりイラストのほうが優れているの?」と思われるかもしれませんが、もちろんそうではありません。
例えば、
- 商品そのものを見せたい
- 店舗や施設を紹介したい
- 実際のお客様の姿を伝えたい
- 商品の質感を見せたい
- 実在する人の信頼感を伝えたい
こうした場合には、写真が有効なことがあります。
反対に、
- まだ存在しないものを表現したい
- 抽象的な概念を視覚化したい
- 独自の世界観をつくりたい
- 現実には撮影できない場面を表現したい
- 複雑な情報を整理して見せたい
という場合には、イラストが有効になりやすい。つまり、写真とイラストのどちらが優れているかではなく、目的に対してどちらが適しているかが重要です。
イラストを使う前に考えたい3つのこと
実際にデザインでイラストを使うか迷ったときは、次の3つを考えてみるとよいかもしれません。
イラストは「その事業らしさ」をつくることもできる
もう一つ、イラストには大きな可能性があると思っています。それは、その事業独自の世界観をつくれること。
例えば、特定の色や線の太さ、人物の表情、モチーフ。余白の取り方、描き方のクセ...
こうした要素を一貫して使い続けることで、「このイラストを見ると、あの会社を思い出す」という状態をつくることもできます。一枚のイラストをきれいに仕上げるだけではなく、Webサイト、パンフレット、SNS、広告など、さまざまな場所で同じ考え方を使っていく。その積み重ねが、ブランドの印象につながっていきます。
「イラストを使うこと」が目的にならないように
デザインでは、つい「何を使うか」から考えてしまうことがあります。写真を使おう。イラストを使おう。この色にしよう。このフォントにしよう。もちろん、それもデザインをつくるうえでは必要な判断です。でも、その前に考えたいのは、「何のために、それを使うのか」ということ。イラストが必要だからイラストを使うのではありません。伝えたいことを、届けたい相手に、より伝わりやすくするために、イラストを選ぶ。その順番はとても大切だと思います。
まとめ|イラストは「伝えるための選択肢」
イラストには、写真にはない自由さがあります。まだ存在しないものを表現することもでき、抽象的な概念を視覚化することもできます。そして、継続で使い続けることでその事業独自の世界観をつくることもできます。
ただし、イラストを使えば必ず良いデザインになるわけではありません。大切なのは「この事業が伝えたいことを、相手に届けるために、イラストという表現が本当に適しているか」を考えること。デザインには、写真、イラスト、文字、図、動画など、さまざまな選択肢があり、その中から目的に合うものを選んでいく。イラストも、そのための大切な一つの手段です。